変化すること/変わらないこと

変化する事と、変わらない僕の根っこ
7月から8月にかけて、僕にとって本当に濃密な時間が過ぎていきました。身内のこと、トークイベント、思いつきの旅、そして久しぶりに会う友人たちとの再会。これまでの自分と、これからどう進むべきかを、改めてじっくりと考える貴重な1ヶ月でした。その「答え合わせ」の旅として、僕が家具職人としての第一歩を踏み出した場所、飛騨高山に家族と行ってきました。



20年前、何も知らなかった僕は、この場所で何を考えていたんだろう?

当時の気持ちは思い出せないけれど、高山の街を歩き、澄み切った川に飛び込むと、なぜか胸が締め付けられるような、懐かしくて切ないような感覚が時々こみ上げてきました。やっていることは20年前と変わらない。ただひたすらに、作りたいという衝動と、誰かを喜ばせたいという気持ちだけで動いていた、あの頃には今のナルグリーンの姿は想像もついていません。
今でも作ることは楽しいし、キレイごとではなく相手が喜んでくれることを自分の手を動かしてできるという事が幸せ。
そうやって根っこが変わらずに今の自分がいられることは、これまでやってきたことが間違っていなかったという事なのかとおもいました。

どちらかというと慎重派な僕ですが、振り返れば重要なポイントで変化を求めてきています。高校3の夏に急に芸大に進路変更したり、テレビの大道具さんになりたかったけど家具の道を目指し飛騨高山で就職したり。その後、神戸に戻り、違う分野の仕事も経験し家具工房に拾ってもらって手仕事や内装家具を教わり、結果として今のナルグリーンがあります。未だに右往左往しながら、より良いものを求めてちょこちょこ形を変えています。
でもすべてに共通しているのは「誰かが喜んでくれるためのものづくりが好き」だということ。

大きな工場ではお客様の顔が見えないし、個人でやっていても売れるものを儲かるから作るというのは楽しみを見出せない。その感覚が自分の性格に合っていると思うので、身近な場所で自分らしいものづくりができるナルグリーンが育ってきていると思います。
大きな工場ではお客様の顔が見えないし、個人でやっていても売れるものを儲かるから作るというのは楽しみを見出せない。その感覚が自分の性格に合っていると思うので、身近な場所で自分らしいものづくりができるナルグリーンが育ってきていると思います。

そして先日、家具の道を目指すきっかけになった先輩夫婦が、山小屋に遊びに来てくれました。大学時代に家具ブームがあったのですが、そのブームの火付け役で雑誌で見ていた憧れの家具職人荒西さん。今ではお家に泊めてもらったり、家族で遊んだり。まさかこんなことになるとは…
最近の近況報告をする中でヒントをもらって、僕は「何かを変えたい」と思っていたけれど、それは「これまでの自分を捨てて、全く新しい自分になること」ではなく、これまでの経験や出会いを大切にしながら、それを土台に「新たなバージョンに更新していくこと」がしたいんだと腑に落ちました。

僕は、見た目の美しさや使い勝手はもちろん、その家具が作られた背景、お客様とのやり取り、そして何より「お家に届くまでの物語を人に話せる家具」というのは特別だと思っています。目に見えないその人の価値。その価値があるからこそ、お客様は「ナルグリーンに頼んでよかった」と心から思ってくださる。僕は、その「物語のある背景」を、皆さんの暮らしにお届けしたいと思っています。
僕にとって「変化すること」は、常に自分に負荷をかけて、良いことも悪いことも受け入れながら進む旅のようなものです。でも、その旅の道しるべは、いつだって変わらない僕自身の本質が示してくれる。そして、その本質は、お客様の喜びと笑顔に触れるたびに、ホッとするし新たな原動力になります。
周りの方々に触発されつつ、自分の家族やナルグリーンはどうありたいかを想像して、これからも新たな企画やアクションを起こしていきます。
