なぜ家具を作るのか..根本に気づかせてくれたソファ
設計士さんからのご紹介で据え付け家具を製作させていただいたお客様から座椅子のように低いソファを作れないかとご依頼がありました。ソファの製作には最低でも2か月ほどはかかるのですが、ご希望は一ヶ月どころではなく一日でも早くとのことでした。
お話を聞くと家族であるミニチュアダックスのロメオ君が余命宣告されており歩いて登れるソファでゆっくり過ごさせてあげたいというご希望でした。
でもその期間では僕には作れません。
その日の晩、悩んだ末に失礼を承知で提案したのが家具量販店で販売されているソファのクッションだけ使い、それをベースに木部をデザイン・製作するという苦肉の策でした。
自分が作っていない市販のものを組み合わせて提供する事に職人としてのうしろめたさがあったのですが、逆に感激してくださり大急ぎで製作にかかりました。
約一週間後に納品にお伺いできたのですが残念ながら一歩遅く、すでに天国に旅立っていました。
その一週間の事を振り返ると気持ちだけで頭も体も動いていたような感覚で、この充実感こそが家具を作りたいという根本だと気付きました。
自分が作ることで喜んでもらえていると思っていたけれど、本質的には家具を喜んでもらっているのではなくナルグリーンがどのように関わって、どのようにご希望に沿う提案ができるかどうかが大切だと気付くきっかけになったソファです。
ロメオ君のお陰で一番大切な事を心の中心に据えることが出来ています。